書評:柴崎友香・田雜芳一「いつか,僕らの途中で」

今年は備忘録代わりに,読んだ本を必ずここでレビューしていこうと思います.もっとも真面目に書いていったら結構な量になるはずなのですが…

新年最初は柴崎友香の本.「いつか,僕らの途中で」.

これはいい.久しぶりの良書.

京都に住む大学院生の「わたし」と,山梨で教員として働く「僕」という遠距離恋愛の二人の往復書簡をまとめたストーリー.いかにも雑誌連載向きのテーマですね.「わたし」を柴崎友香が,「僕」とイラストを田雜芳一が担当しています.

ものすごく温かい本です.

二人の作家が担当している文章ですが,その文の雰囲気は間違いなく柴崎友香.彼女の文体や描くキャラクターには若さがありませんが,とても温かい言葉を使う作家ですね.この本で描かれる男女も24歳という若さながら文通,しかも割とじじむさい内容で「今時こんなクラシックな若い女いねーよ!」とツッコミたくなる気持ちもありますが,小説として読むにはこれくらいでいいかもしれません.

二人の往復書簡だけで1年という時間の経過をつづり,特にドラスティックな事件も最後に別れるという結末もありません.最後に別れがあると一気に島本理生「ナラタージュ」風になりますが…

多くはない文章に,田雜芳一が描くデッサン調のイラスト(色鉛筆画を描く私としてはこんな絵が描けるようになりたい).組み合わさるとまるで絵本.谷川俊太郎+田中渉「あなたはそこに」に近い印象ですね.温かくて良書.本棚に一冊置いて,ときどき読み返すと幸せな気分になれると思います.

結局,恋愛小説というのはファンタジーといっても過言ではなく,現実のように辛さは描かれなくてもいいのかもしれません.誰も傷つかない本も,たまには悪くないですよ.

2007年01月07日 13:50 | URL | コメント (2) | トラックバック (1) | 書評・読書

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コメント

はじめまして。

柴崎友香の書く話は、基本的に何も起きないので好きです。(笑)
最近の売れ筋の本は色々な事が起こりすぎるので苦手です。
こんな感覚自体が日本人的なのかもしれませんが。。。

投稿者 zenzy : 2007年01月08日 22:10

コメントありがとうございます。

何も起こらないのがいい、というのは言いえて妙ですね。平和な気分になれる詩のような感覚が好きです。

もっとも私の場合はそれだけでは足りず、人が死んだり殺されたりというのも読みますがw

投稿者 mixvox : 2007年01月09日 19:06

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