書評:東野圭吾「幻夜」

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文庫化されたばかりの東野圭吾「幻夜」を読みました.ドラマ化された「白夜行」の続編とされる長編小説です.「白夜行」の大ファンである私は興味深く読みました.

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幻夜

著者はインタビューの中で,「幻夜」が「白夜行」の続編なのかと問われたインタビューにて,

ただ『白夜行』の“続編”にはしたくなかったので、『幻夜』を書くとき、そこは苦労しました。ズバリ書いてしまうのは無粋。両方を読んだ人同士でいろいろ想像して盛り上がってくれればいいな、と思っています

と答えています.そして両方読んだ私からすると,これは「白夜行」の続編にしか感じられませんでした.「幻夜」の新海美冬は「白夜行」の唐沢雪穂ではないかと.この辺りの考察は以下のサイトが詳しいです.

東野圭吾さんのファンサイト/御託をもうひとつだけ/幻夜は白夜行の続編か!?

以下,ネタバレ.


「幻夜」と「白夜行」とは,過去の罪を隠すために同様の罪を繰り返す男女のパートナーを描くという点で共通しています.また,女性(まぁ同一人物と見るべきかもしれませんが)が成り上がり,男性はその影となり…という展開も似ていると思います.一方で,直接的な犯罪にいたる行動や感情の描写がなく,また主人公の男女2人の接触を一切描かなかった「白夜行」とは以下の点が異なります.

1. 雅也の回想として,直接的な殺人の状況を描写している
2. 美冬と雅也とが接触するシーン,セックスするシーンが描かれている
3. 美冬の言われるがままに罪を犯す雅也の苦悩が描かれている

すみません,1.は読んでいて吐きました.

2.についても読んでいて辛かった.愛する美冬とのセックスも彼女の思うがままにコントロールされ…「白夜行」での亮司は極端な遅漏を抱えていましたが,もし舞台裏で雪穂とこんなセックスをしていたらそうなるな…と思ってしまう.

3.も吐きそうでしたが,自分が美冬に操られていただけに過ぎないと気付いた後の雅也の苦悩.そして意外な結末.

…私は「白夜行」の大ファンだけに,雅也が困難な状況に置かれるたびに「あぁ…亮司もこんな思いをしていたのかな・・・」と辛くなりました.雪穂のために,あれだけクールに罪を犯した亮司も裏ではこんなことを…と邪推して読んでいました.

ただ,最後の最後まで美冬(雪穂)の本性は明らかになりませんでした.彼女はどこに行こうとしているのだろう.人を騙し,豊かな男性と結婚し,地位と経済力を手に入れ…それで終わり?彼女のゴールはどこにあるのだろう.何を求めて白夜の中を生きているのだろう.なぁ雪穂,あなたはどこに行こうとしているんだ?

女性って怖いと思わせた「白夜行」「幻夜」.どうせならさらなる続編で,雪穂(美冬)という稀代のファム・ファタルの終焉を見たいと思います.

最後に.雪穂/美冬のパートナーとなった亮司/雅也.彼らの生き方が幸せだと思う私は,既に魔性の女の魅力に捕われているのかもしれません.まぁ女性はすべて魔性系ですから.

白夜行 (集英社文庫)