書評:石田衣良「反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパークV」

石田衣良の池袋ウエストゲートパーク(IWGP)シリーズ第5弾が文庫化.単行本のときに読んでいるんだけど購入(これが私の本棚が片付かない理由).

反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク5 (文春文庫 い 47-9)
石田 衣良
文藝春秋 (2007/09/04)
売り上げランキング: 120

表題作「反自殺クラブ」は,自殺系サイトを通じてのネット心中を防止しようとするクラブの話.自殺をテーマにしただけに,IWGP史上もっとも暗く,救いのない作品かもしれません.他の作品も,風俗営業や中国の向上の労働環境など,全体的に暗め.

著者はIWGPシリーズを「今の時代のドキュメンタリー」と言っていますが,現在の日本には明るいニュースは少ないのかもしれません.

そんな中,唯一明るくニヤリとしてしまうのが「伝説の星」.70年代にミリオンヒットを飛ばしたオヤジ歌手が,自らの夢であるロックンロールの博物館を建設しようという話.普通にいい話と思いきや衝撃のオチがあるのが,著者の筆の巧さ(オチは言わないので買って読んでください).

そのオヤジ歌手・神宮寺貴信が音楽について語る言葉が,ちょっと響きました.音楽を志した人間には感ずるところがあると思うので,長いけど引用します.

「だけどこの日本じゃあ,音楽はすっかり子どものものになっちまった.十代のガキのありあまる性欲の代用品として,音楽みたいに素晴らしいものが消費されていく.見てみろ,テレビの歌番組は,大人にあやつられて人形のように動く子どもの天国だ.(略)」
「音楽はほんとに子どもだけのものなのかな.おれは日本の男が情けないよ.誰だって高校生のころはなけなしのこづかいをためて,ものすごく高価だったLPを買ったもんだ.そいつらがもう音楽を忘れちまった.仕事と生活に追われて,時間も金もないという.音楽なんて,映画なんて,小説なんて.あんなものは,みんなただの贅沢だという.だが,そうやって何年か暮らしたら,誰だってやせ細ってがりがりの人間になっちまう.地面師の片棒をかついでいるおれがいうのもなんだが,それじゃあこの国の文化はいつまでたってもガキのままだ」

後半は,著者の素直な気持ちかもしれません.