書評:東野圭吾『たぶん最後の御挨拶』

東野圭吾が「たぶん最後のエッセイ」とし,今後は本業のミステリー執筆に専念すると明言しているエッセイ集.たぶんと称している時点で,なんとなく方向性が変わるのを示唆している気もしますが.

東野圭吾『たぶん最後の御挨拶』
たぶん最後の御挨拶

本人による年譜,自作解説など,エッセイというより伝記に近いものがあるかもしれません.

私は著者の読歴が浅いので知りませんでしたが,乱歩賞からデビューしていたのですね.しかも1回目の応募ではいきなり原稿用紙に書き始めたものが2次選考,2回目の「魔球」で最終選考,3回目の「放課後」で受賞,というのがすごい.デンソーに勤務しながらですからね…

順調なデビューとは変わって,その後の苦労話も興味深い.『天使の耳』について.

ぱっとしないといえば,この年の春,『天使の耳』が日本推理作家協会賞短編部門の候補になったが,やっぱり落ちた.その時も担当者はまるで連絡を寄越さなかった.電話をかけてきたのは落選した直後で,その台詞は,「予想通りでしたね」というものだった.彼は電話の向こうでちょっと笑ってもいた.もし自分が売れっ子作家になっても,絶対にこいつの会社では書かないと決意した.

『天空の峰』について.

落選した夜,編集者とやけ酒を飲んでいたところ,受賞者の真保裕一と遭遇した.あっちがやけに恐縮していたのがおかしかった.その後真保裕一は文学賞を獲りまくり,そのたびに私は二次会で挨拶させられるのだ.真保裕一に「おめでとう」と心にもないことをいうのは飽きた.

名探偵の掟』について.

『名探偵の掟』が吉川英治文学新人賞の選考委員からボロカスにいわれて落選し,出だし好調だ.

…賞レースをめぐる裏舞台については,『黒笑小説』で皮肉られているのでご一読を.しかし,やっぱり欲しかったんじゃん直木賞.

しかし,こんな苦労の日々も読み返してみればさまざまな作品に反映されており,結果として現在の筆力の厚みとなっているように思います.作品の裏事情を知りたい方,東野圭吾好きにはたまらない一冊.

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2008年06月22日 09:28 | URL | トラックバック (1) | 【更新終了】書評・読書

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たぶん最後の御挨拶東野 圭吾文藝春秋このアイテムの詳細を見る 今回は、東野圭吾『たぶん最後の御挨拶』を紹介します。あとがきに書いてあるように、東野氏の最... [続きを読む]

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