書評:石田衣良『愛がいない部屋』(文庫版)

文庫化された石田衣良『愛がいない部屋』,読了.単行本の時点でも読んでいたので再読になりますか.

»愛がいない部屋 (集英社文庫 い 47-5)
愛がいない部屋 (集英社文庫 い 47-5)

»愛がいない部屋
愛がいない部屋

装丁は単行本の方が好きだなぁ.

著者の恋愛短篇集は『スローグッドバイ』『1ポンドの悲しみ』に続いて3冊目.前2作と違って,実にビターです.以下,Amazonの紹介より.

舞台は神楽坂に建つタワーマンション「メゾン リベルテ」.自由の家という名のマンションに住む、そう自由ではない人々の暮らしを、すこしだけリアルに描いた10篇の恋愛短篇集.『小説すばる』での連作をまとめて書籍化.

神楽坂の高層マンションを舞台にした本作は,DV,ニート,出会い系サイトでの浮気を繰り返す主婦,育児と仕事の両立の苛立ち,60歳を過ぎた男女の恋など,一言では片付けられないテーマが多いです.必ずしも悲しいオチばかりではないのだけれど,少し寂しくなる話ばかり.

30代後半の女性がマンションを買おうとし,その恋人の男性の姿も描いた『いばらの城』が好きです.しかし,一番印象に残っているフレーズは,30歳を過ぎてセックスにのめりこんでいく夫婦を描いた『魔法の寝室』から,夫に浮気を告白された妻の気持ち.

麻耶はとなりにに横たわる夫の顔を見た.この人は単純なのだ.嘘を抱えて生きていくことの重さをただ放りだしたいだけなのだ.その重さをわたしの肩にのせて,明日からは嘘をつかない誠実な夫として生きていきたいのだろう.想像力のない善人だ.

あー,こういうタイプいる…こういう男にはならないようにしようっと.


なお,文庫化にあたって追加された,精神科医でタレントの名越康文氏による解説が秀逸.これだけでも読む価値があると思います.

実は僕は十年ほど前から愛という言葉に警戒心を持っていて,「愛なんてまったく知らないというところからはじめよう」とよく言っていたんです.でも,この短編集を読み進めるうちに,「もう,愛という言葉を捨てよう」とまで一瞬思い詰めました.この小説に描かれている「現代の現実」はそこまで切迫している.

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2008年07月31日 20:11 | URL | トラックバック (0) | 【更新終了】書評・読書

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