書評:東野圭吾『容疑者Xの献身』

東野圭吾がついに直木賞を受賞し,ドラマ『ガリレオ』シリーズとして映像化された『容疑者Xの献身』をようやく読みました.文庫版の帯より.

運命の数式.命がけの純愛が生んだ犯罪.
これほど深い愛情に,これまで出会ったことがなかった.
この世に存在することさえ知らなかった.

帯通り.そして評判通り.この本すげぇぇぇ!こんなに惹きこまれた小説は久しぶりだ.以下,映画『容疑者Xの献身』ならびに先日のドラマ『ガリレオΦ』を観ていない方向けにネタバレ少なめに書く.だいたい私自身が映画を観るつもりでいるし,後者のドラマは録画したものの観ていない...

»容疑者Xの献身
容疑者Xの献身

以下,容疑者Xの献身 - Wikipediaのあらすじより.

花岡靖子は娘・美里とアパートでの二人暮らし。

物語は靖子の元夫、富樫慎二が彼女の居所を突き止め、訪ねてきた事から始まる。どこに引っ越しても疫病神のように現れ、暴力を振るう富樫を靖子と美里は大喧嘩の末、殺してしまう。今後の成り行きを想像し呆然とする母子に救いの手を差し伸べたのは、隣人の天才数学者・石神だった。彼は自らの論理的思考によって二人に指示を出す。

ということで,主人公のガリレオ探偵こと湯川学と,天才数学者・石神という二人の天才の戦い.そして,石神と花岡母娘との,というより石神の母娘への愛を描く話.

非常に身も蓋もない言い方をすると,いい歳して独身でコミュニケーション力の低い理系中年の偏愛でしかない話なのですが,それをこうまで心を打つ話にした著者の腕の素晴らしさ.

東野圭吾というと,終盤の急展開→トリックのネタバレ→号泣という怒涛の展開をラスト数ページでやってのける天才ですが,面目躍如という感じ.一方で,罪を犯した者の焦燥感,読者のミスリードを誘う序盤からの伏線(まさか冒頭から伏線があるとは!),そして一種の救われなさも著者らしい感じ.これは東野圭吾の代表作ですね.

私は『探偵ガリレオ』シリーズは初めて読みましたが,過去の作品と関係なく読める小説です.今年一番の衝撃作です.


以下,映画版を観ていないけれど,ツッコミ3点(これから観る予定なので勘弁).

冬山ロケとかいるの?

予告編を観る限り,雪山のロケなどがあったようですが...はたしてこれは必要だったのか.むしろ密室劇とまでいかなくても,狭いロケーションでこそ生きる芝居のような気がしました.

石神の堤真一はミスキャスト

あくまで原作を読む限りだが,石神は堤真一のような二枚目ではなく平凡な,小説の言葉を借りると「醜い」容姿の男性が必要ではないでしょうか.そうでないとラストの哀しさが今ひとつだし,湯川先生(福山雅治)のトリック解きも今ひとつのような気がします.私はドランクドラゴンの塚地さんが大好きなんですが,彼あたりに鬱屈した,それでも優しい石神を演じて欲しかったですね.山口智充さんや城島茂さんあたりもいいかも.

一方で,堤真一だからこその魅力が映画にはあるかもしれない.そう思ってしまうのは,フジテレビのマーケティングのすごさなんでしょうね.

福山さんの相方は柴咲コウではなくて北村一輝であるべきだ

原作の湯川准教授(福山雅治)のパートナーは,大学同期の草薙(北村一輝).柴咲コウちゃん演じる内海薫はシリーズ本作後に登場するとかで,実質オリジナルキャラクターに近い感じ.

私は柴咲コウちゃん大好きで,テレビドラマの方はナイスキャストだと思います.しかし,本作の福山さんのパートナーはコウちゃんではなく,草薙演じる北村さんなのではないかな.本作は,湯川と石神という天才に草薙の行動力や観察力が絡むからこそ面白いと思います.映画でコウちゃん(なれなれしい)が演じるポジションは分かりませんが,内海刑事がそこまでの役割を担えるのか.いや三人が大学の同期だからこその緊張感があるのでは...そんなことを思いました.

繰り返しますが,私は柴咲コウちゃん大好きです.


そんな感じでツッコミどころはあるけれど,やっぱり映画が気になる...


容疑者Xの献身 スタンダード・エディション [DVD]
容疑者Xの献身 スタンダード・エディション [DVD]