書評:東野圭吾『夜明けの街で』

東野圭吾「夜明けの街で」に眞鍋かをりが一言というエントリー以来ずっと気になっていた『夜明けの街で』読了.

»夜明けの街で
夜明けの街で

書評blogに必要な要素が「自らの体験を語ること」という説に従って,本書を読む前と読んだ後で私に与えた影響を一言で書く.不倫イクナイ!(・A・)

Amazonよりあらすじ.

渡部の働く会社に、派遣社員の仲西秋葉がやって来たのは、去年のお盆休み明けだった.僕の目には若く見えたが、彼女は31歳だった.その後、僕らの距離は急速に縮まり、ついに越えてはならない境界線を越えてしまう.しかし、秋葉の家庭は複雑な事情を抱えていた.両親は離婚し、母親は自殺.彼女の横浜の実家では、15年前、父の愛人が殺されるという事件まで起こっていた.殺人現場に倒れていた秋葉は真犯人の容疑をかけられながらも、沈黙を貫いてきた.犯罪者かもしれない女性と不倫の恋に堕ちた渡部の心境は揺れ動く.果たして秋葉は罪を犯したのか.まもなく、事件は時効を迎えようとしていた・・・.

本にも人にも、運命を感じるときってありますよね~『夜明けの街で』~ より,眞鍋かをりさんの感想.

今回は東野圭吾さんの「夜明けの街で」.この本、私は「一粒で2度美味しい」本だと思います.

まもなく時効を迎えるある殺人事件をめぐった正統派のミステリーであり、主人公が不倫の恋に落ちた相手はその事件の容疑者・・・・・・という、苦めの恋愛小説でもある.

眞鍋さんの指摘通り,本書はミステリーであり恋愛小説でもあります.むしろ後者ではなかろうか.


主人公・渡部は40歳前,当初は不倫を軽蔑する姿勢をとっていますが,秋葉に興味を持ち,一線を越えてしまいます.自分が築き上げてきた家庭を壊すことに躊躇いを覚えつつも,徐々に秋葉との関係に溺れていきます.一方で,ある瞬間からの秋葉の決意(開き直り?)には及び腰になる一面も.

「あたしはあなたを自分のものだと思うことにしたから」

そりゃ,不倫中の女性にこんなこと言われたら及び腰になりますね...

不倫にのめりこむ過程,妻をどうやって騙すかという工夫,そして妻バレを恐れるおっさん.恋愛小説というよりブラックコメディとしても読めるかもしれません.ラストは男性なら背筋が凍ります.女性は怖い...

渡部の悪友・新谷が主人公の暴走を諫めつつも,自身の経験からアドバイスをするシーンが多々あります.中には妻バレしない方法のアドバイスも.この辺りにも,ちょっと情けない中年のラブコメディ&ブラックユーモア色が見られます.あと不倫イクナイ!(・A・)って真面目に思う.


一方,ミステリーとしてはどうか.『容疑者Xの献身』では終盤の急展開→トリックのネタバレ→号泣と書きましたが,本書は急展開→ネタバレ→救いのない結末パターンでしょうか.東野圭吾のミステリーは,終盤まで事件の手がかりが(おそらく意図的に)伏せられていることが多いですが,本書もこれに該当し,予想だにしなかった結末を迎えます.さすがにオチは伏せよう.ジェットコースターのような展開に吃驚.


『白夜行』『容疑者Xの献身』『手紙』『秘密』(これは未読)『変身』(これも未読)といった著者ベストには挙げられないかもしれませんが,急展開のインパクトと不倫イクナイ!(・A・)という教訓より,個人的には記憶に残る作品となりそうです.

あとは『流星の絆』読まないとなー.