書評:東野圭吾『聖女の救済』

東野圭吾の新作『聖女の救済』,読了.著者のガリレオシリーズは『容疑者Xの献身』以来,2作目.いや,実に面白い.

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聖女の救済

映画を公開しているこのタイミングで2作同時に単行本を出す著者は確信犯ですね.

※以下,ネタバレなしの解説.

Amazonより,あらすじ.

「これは完全犯罪だ」 男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は...虚数解。「ガリレオ」情念の長篇。

草薙刑事が恋をする,というのがいいですね.ある事件(おそらく『容疑者Xの献身』)以来,警察への協力を拒んでいた湯川准教授が,内海薫刑事から聞かされたこの事実により,推理を働かせるストーリー.

湯川の推理,恋をしている割に冷静な判断力で捜査を進める草薙はもちろんのこと,新人女性刑事・内海薫が大活躍.非常に優秀な刑事であることが分かります.ドラマ『ガリレオ』から入った身からすると意外.三人がそれぞれ進める推理が絡み合う様は実に面白い.

特に草薙刑事はいいですね.彼の恋と女性の情念が交差するこの作品は映像化に向いていると思いますが,ドラマ『ガリレオ』では草薙刑事が栄転したことになっているので難しいかもしれません.むしろ弓削刑事?事実,私の頭の中では品川祐(品川庄司)演じる弓削刑事で脳内再生されました.そして草薙が惚れる真柴綾音が桜井幸子あたり.

最後まで読者を惹きつけるトリックも見事.見事なフー&ハウダニットです.『聖女の救済』という意味深なタイトルの意味も,最後の最後で分かります.


ただ,ホワイダニットの描写が物足りないのが残念.いや,動機は明らかなのですが,事件発生後の真犯人の言動の理由が明確に示されていないのがね...

ネタバレをするのは無粋なので,台詞を中心とする断片を引用して終わります.想像してみてください.

私はあなたを心の底から愛しています.それだけに今のあなたの言葉は私の心を殺しました.だからあなたも死んでください-.
「草薙さんは」彼女は湯川の目を見つめて続けた.「恋をしています」
「おそらく君たちは負ける.僕も勝てないだろう.これは完全犯罪だ」
「特別な感情を持ったって,別に構わないんじゃないか.僕は君のことを,感情によって刑事としての信念を曲げてしまうような弱い人間ではないと信じている.(後略)」
「じゃあ,どういう女性ですか.草薙さんは,夫人の何を御存じだというんですか」

最初の「心を殺す」というフレーズは『幻夜』でもありましたね.