書評:東野圭吾『ガリレオの苦悩』

聖女の救済』と同時発売された短篇集『ガリレオの苦悩』,物欲に負けて買ってしまいました.新刊の単行本をこんなに買うのはいつ以来でしょうね...

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ガリレオの苦悩

容疑者Xの献身』『聖女の救済』という長篇から探偵ガリレオシリーズを読み始めた私にとっては,とても新鮮な短篇集でした.しかし,短編こそが本シリーズの醍醐味なのだろうとも思います.

適当な引用元がないので,あらすじを適当に書いてみる.


第一章「落下る(おちる)」・・・マンションから転落死した女性の遺体には凶器で殴られた跡が.本シリーズ初登場の内海薫刑事は,帝都大学准教授・湯川学に協力を求める.

第二章「操縦る(あやつる)」・・・元帝都大学助教授・友永幸正の自宅の離れで起こった密室殺人.友永のかつての教え子である湯川が導き出した真相とは.

第三章「密室る(とじる)」・・・ペンションで起こった密室殺人.旧友のオーナー・藤村に調査を依頼された湯川は,藤村の妻やその弟の行動を気にする.

第四章「指標す(しめす)」・・・ダウジングにより強盗殺人事件の手がかりを発見した少女.湯川がダウジングの真相に挑む.

第五章「攪乱す(みだす)」・・・自在に人を殺すことができる「悪魔の手」を名乗る無差別殺人犯が,湯川の頭脳に挑む.


先述の通り,私は長篇2作から本シリーズを読み始めました.2作からは本シリーズが理系ミステリーと称されることにいまいち納得できませんでした.ミステリーの名を借りたヒューマンドラマ(または人情噺)という感じ?東野圭吾によくあることなので,別に悪いとは言いませんが.

しかし,本書では事件発生→湯川の謎解き→トリック解明と非常にリズムよく進みます.長篇にありがちな二転三転はないし,お約束ものとして安心して読むことができます.短篇と長篇はまったく別物ととらえた方がよさそうです.

秀逸なのは「操縦る(あやつる)」「攪乱す(みだす)」.前者は先日テレビで放送されたドラマ『ガリレオΦ(エピソードゼロ)』の原作です.少し設定が違いますが,原作の方が容疑者と湯川の関係が近いだけに味があります.後者は,同じ研究者と対決する『容疑者Xの献身』と比べると,犯人の身勝手&小物感さが際立ちます. 「自由に人を殺せる」という設定が『DEATH NOTE』っぽいですね.


非常に面白かったし,過去の短編集2冊も読みたいと思わせてくれました.

ところで探偵ガリレオシリーズはまだまだ続くのでしょうか.劇中の世界では湯川の警察への協力は有名になっているようで,私人として科学者として草薙達を支援するという前提が崩れてきているように思います.そろそろ潮時じゃないですかねー(全部読んでないけど).フジテレビはまだまだ引っ張りたいでしょうけど.本書も映像化しそうな予感・・・


それでは最後に,印象に残った台詞を引用して終わり.

「価値のない実験なんかはない」
「まずはやってみる-その姿勢が大事なんだ.理系の学生でも,頭の中で理屈をこね回すばかりで行動の伴わない連中が多い.そんな奴らはまず大成しない.どんなにわかりきったことでも,まずやってみる.実際の現象亜からしか新発見は生まれない.僕は草薙から場所を訊いてここへやってきたけど,もし君が実験をしていなければ,そのまま帰っていただろう.そうして,おそらく二度と協力する気にはなれなかっただろうね」
「君は変わったな.昔は科学にしか興味がなかったはずなのに,一体いつの間に,人の心がわかるようになった」