書評:永倉新八『新選組顛末記』
新撰組好きには是非とも読んでいただきたい.読んでてグッときます.
新撰組の二番隊組長にして,その腕は局内随一とも謳われた永倉新八,のちの杉村義衛翁の口述という形で綴った新撰組の歴史を語る上で欠かせない本書.初めて読んだけど興奮しました.
大正2年(1913年),小樽新聞の記者に語るという形で始められた連載「永倉新八-昔は近藤勇の友達 今は小樽に楽隠居」が元となっているようです.このあたりはWikipediaが詳しい.
本人自らの筆ではないため脚色もあるでしょうが,実に面白い.明治の頃には賊軍とされた新撰組ですが,
蛮名天下にふるう近藤勇が一代の健闘悪戦と伝えらるる池田屋襲撃となったとき,壮年の永倉新八が腕におぼえの太刀をふるって必死の志士をその場に四人まで斬りたおし,身には微傷を負うたばかりとはいまも記録にのこる.
短袴高下駄の隊員が肩で風を切って通ると泣く子も声をおさめたというありさま,永倉の名はこれから近藤,土方等とともにいや高く鬼神のようにおそれはばかられるにいたった.
というだけに,新撰組と永倉新八の雷名のすごさが分かります.
特筆すべきは,池田屋事変などの生々しさ.
敵は大上段にふりかぶって「エイッ」と斬りおろすを,青眼にかまえた永倉はハッとそれをひきはずして,「お胴ッ」と斬りこむと,敵はワッと声をあげてそのままうち倒れたのでさらに一太刀を加えて即死せしめ,ふたたび縁側にかけ戻り,敵やあるとみるまにまたもひとりの志士が表口へ飛びこんでいくと,待ちかまえた谷の槍先に突かれてあとずさりするところを追っかけていった永倉が一刀のもとに切り殺す.こんどは縁側伝いに雪隠へ逃げこもうとする敵を見つけた永倉が,うしろから矢声とともに斬りつけてこれも即死した.
これはその場にいた人間にしか語ることのできない臨場感です.「お胴ッ」とか,他にも「お小手ッ」とかね.こういった剣術衆に優れるのはもちろん,情にもろい永倉の姿も描かれています.山南敬助や藤堂平助との別れのあたり.
本人や周辺の記者が書いただけに多少のひいきは必要でしょうが,当時のリアリティを伝えるという意味で,実に興味深い本書です.新撰組の小説も好きですが,それらのもととなった本書も是非ご覧頂きたい.
ところで,本書で分かったのですが,永倉新八と近藤勇の仲は,必ずしもよくなかったようです.近藤勇の驕慢ぶりを諫めた実績からも想像できますが,それを機に近藤はかなり根に持っていたようなことが本書で描かれています.
それが影響しているかは分かりませんが,近藤勇との別れの言葉が勇ましい.
「二君につかえざるが武士の本懐でござる.これまで同盟こそすれ,いまだおてまえの家来にはあいなりもうさぬ」と激しながら,だんだんこれまでの交誼の礼を述べ,原田,矢田などとともに立ち去った.
激しながらも礼に正しい永倉新八の姿が目に浮かぶようです.
今思えば大河ドラマ『新撰組!』で永倉を演じた山口智充(ぐっさん)はかなりハマリ役でしたね.
2009年06月25日 20:31 | URL | トラックバック (0) | 【更新終了】書評・読書
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