もし池波正太郎が桃太郎を書いたら(最初からクライマックスな鬼平犯科帳篇)

影響を受けて書いてみた。ついカッとなって原作も見ずに書いた。後悔はしていない。


鬼ヶ島の裏手で、物凄い音響がした。
赤鬼も、棍棒をつかんで起きてきた青鬼たちも、途端に、
「何事だ!」
とはね起きたほどである。
鬼ヶ島の裏表から打ちこんだのは、桃太郎ほか犬、猿、雉の合わせて四名。
青鬼どもを相手に烈しく闘う犬、猿、雉の中を、駆けぬけた桃太郎が奥の間に躍りこみ、
「鬼ヶ島の赤鬼、神妙にせよ。おとなしく御縄につくがよい。それとも、無辜の人々から奪った財宝を差し出すか!」
「おのれ!」
赤鬼は猛然と棍棒を打ちこんできた。
「む...」
ななめに身をひらいてかわした桃太郎の編笠が、ばさっと音を立てて切り飛ばされた。
意外に、するどい刃風である。たいていの者であれば、ひとたまりもなかったであろう。
だが、桃太郎は編笠をぬぎ捨て、粟田口国綱を抜きはなち、すらりと平正眼にかまえた。
「うぬ!!」
身を沈めざま赤鬼が、すくいあげるように桃太郎の胴をなぎはらってきた。
「鋭!!」
身をひねって、これをかわした桃太郎の正眼から疾り出た粟田口国綱二尺二寸九分の大刀が、そやつの肩口からくびすじを切り裂いた。
「むう...ん...」
ばさっと音がして、赤鬼のその体が倒れた。
桃太郎は大刀にぬぐいをかけ、鞘におさめた。
庭には秋の冷たい雨が降っている。


以下、反省点。

  • 密偵(いぬ)の犬が鬼ヶ島を探り当て、桃太郎の役宅にて報告。桃太郎に労をねぎらわれ、涙するシーンを構想したけどめんどくさくなった(例:犬の両眼にみるみる熱いものが吹き出てきた)。犬だけに密偵(=狗=いぬ)なんだけど。
  • 鬼の配下である雉がいろいろあって桃太郎の密偵になる序章を書こうと思ったけど、たぶんそれだけで一章になりそうなのでやめた。
  • 池波正太郎先生の文章は読みやすいけど、傍点がないといまいちらしくないかもしれません。
  • 改行も<p>によって1行飛んでしまうと、同様にらしくない。
  • よって、池波先生の文章は意外とWebに向いていないのだろうか。
  • 敬愛する池波先生のパスティーシュ(文体模写)がこんな適当な感じで終わったことに心からお詫びします。もう少し面白く書きたかった...
鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
池波 正太郎
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